センス オブ ワンダー

中村桂子「科学と感性」より

38億年という長い時間を共有し、今ここに共にある存在として見たとき、チョウもバラも単に可愛いとか美しいというところを越えた愛情の対象になる。
まさに理性を基本に置いた感性である。

とはいえ、この知的な愛は、DNAを知らなければ生まれないというものではない。
私が初めてこれに気付いたのは、日本の自然の中で蟲をつぶさに観察した一人の女性の物語「蟲愛づる姫君」(堤中納言物語所収)を読んだときである。
年齢は13歳ほどだろうか。
美しいチョウよりもその幼虫にこそ生きる力がある、とそちらを可愛がるのだ。
完全な自然志向、眉も剃らず、歯も染めず観察を続ける。
平安朝後期に、自然の中に浸っていたからこそ生まれた鋭い感性と同じものが科学を通して得られることに気付いたがゆえに、21世紀は「愛づる」に代表される感性を磨くことで心豊かな生き方をしたいと考えている。


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