「星夜航行」

上下2巻の分厚い本だ。sei.PNG主人公は架空の人物かと思って、読み終えたが、実在の人物らしい。森鴎外の短編小説「佐橋甚五郎」がその根拠らしい。家康のもとから姿を消した甚五郎が後年、朝鮮国からの使節団の一員として家康の前に出現する話。「星は雨や曇りの日には見えませんが、一定の軌道で動きます。人生には変転がありますが、どんな立場になっても心の指針がぶれなければ、きっと良い人生を過ごせるんじゃないかと思う」。タイトルの所以とか。小説は秀吉の朝鮮侵略の様子を日本、朝鮮、明、イスパニア、ポルトガルからの視点で描いていく。日本では文禄・慶長の役、朝鮮では壬辰倭乱・丁酉倭乱、中国では萬暦朝鮮之役と呼ばれる。川越宗一の「天地に燦たり」と同じ舞台で似たような感動を受けた。主人公のわずかな事実からこれだけ想像を膨らませるとは素晴しい。それにしてもこの時代は簡単に人が殺され、人身売買は横行し、権力者のエゴのため、すべての階級の物心が疲弊していく。その様子は子細に記載されている。その一例。豊後臼杵の一老僧の日記から「日本より様々な商人が来た中で、人買い商人も来た。軍の後陣にくっ付いてまわり、老若男女を買取っては縄で首をくくって集め、先へ追立て、歩かなければ杖を振上げて追立てる。その有様は、さながら地獄の鬼が罪人を責める光景を見ているようだ。
中でも殊におぞましきことは、港からずっと奥の普請場まで重き荷を山のように積んだ車を牛に引かせ、やっと普請場まで着いたところ、「牛はもう必要がない」などと人足たちが言い、その場で打殺して皮を剥ぎ、それを食べていることである。これは、もはや人間のやることではない。ただ畜生道としか言い様がない有様である。」

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