「負けしろ」

日本には水があり、森があり、田畑があり、海には魚介類がいる。自然からの贈物をつつかしく享受していることに甘んじれば、私たちはそれほど必死で金儲けしなくても、なんとか生きていける。日本には経済成長しなくても生延びられるという「負けしろ」がある。けれども、その事実を政治家もビジネスマンもメディアも決して認めない。日本列島には豊かな贈与者としての自然資源があるという「事実」はひた隠しにされている。逆に、海を埋立て、山を崩し、川をせき止め、森を切開き、高速道路を通し、高層ビルを造成し、原発を増設して、自然を破壊し尽さなければ生きていけないのだというスローガンだけが繰返しアナウンスされている。
<中略>
「日本人らしい自然えの愛」、それがかなりの程度まで集団的な幻想に過ぎないことを私は知っている。だが、それでも、国民感情を動員して、自然を守り、伝統文化を守るためには、この「単純な言葉」にそれなりの実質を賦与するしかないと私には思われる。私が「日本人は固有の身体文化を有しており、それは自然への深い親しみの感情によって彩られている」という仮説にこだわるのは、私たちの手元に使える武器がもうこれしか残っていないからである
内田樹「日本の身体」2014年 のあとがきより。負けしろという言葉は初めて目にした。
おなじあとがきのなかで、オイディプス一族の名前の意味や、レヴィ=ストロークの仮説から人類は「うまく歩けない」ことを選んだとつなげ、神話は、そのような人間の身体運用の自由と多様性を祝福するために創られた。との説は気宇壮大だ。sin.PNG

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