虎落笛

宇江佐さんは函館に住みながら、どうして江戸の風物自然をうまく表現できるのだろう。その疑問は、ご自宅近くの夜道を歩いているときに氷解した。津軽海峡からの風を受けて松の梢が高い音を虚空に鋭く響かせていた。初めて聞く本物の虎落笛だった。東京から消えた江戸の自然が生きている。古き良き人情も消えていない。
宇江佐真理「憂き世店 松前藩士物語」の解説より。
「夏井いつきの100年俳句日記」に虎落笛の説明がある。

掛川 さて、今朝ご紹介する季語は「虎落笛」です。「虎」に「落ちる」に「笛」と書いて「もがりぶえ」。夏井さん、これはどういう季語なんでしょうか?
夏井 「もがり」はもともとは戦などのとき、竹を筋違いに組み合わせて縄でしっかり結い固めて柵をしたものです。大河ドラマの合戦シーンで見たことあるかもしれませんね。そこに吹き付ける烈風のたてる音が虎落笛。風の激しい冬、電線がヒューヒュー鳴りますね。あれも虎落笛と捉えていいかと思います。さみしい音に加えて、季語の背景に「戦」のイメージもあって、不気味な季語といえます。

掛川 「虎落笛」を詠んだ句には、どんなものがありますか。
夏井 大変有名な一句です。

もがり笛風の又三郎やぁーい   上田五千石

夏井 宮沢賢治の『風の又三郎』の世界を下敷きにした一句です。村の小学校に転校してきた三郎少年は、風の神あるいは悪霊である「風の又三郎」ではないかと噂されます。物語の最後には疎外され、再び転校してしまう三郎少年。「虎落笛」という季語の本意と物語が響き合います。おどろおどろしい風の響き、蕭条ともたらされる寂しさ。虎落笛に向かって呼びかける「やぁーい」という響きも「虎落笛」と共に消え入っていくようです。

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