饒舌体

「ラニーニャ」より
”するとそのうち、よいしょというたびに、口から息がすっと抜けていくことに気づいた。エクスヘイルって。えーと、日本語で何というのか、息を吐く。反対がインヘイル、息を入れる、息を吸う。
プリーズ、ってケヴィンがいいますから、よーしインヘイル、よーしインヘイルって、ケヴィンがときどきいいます。あたし筋肉が緊張してつい呼吸をとめてるんですね。それで、力を入れるときに、よいしょで、なるほどエクスヘイルをちゃんと誘発しているんだと。
エクスなになにということばが好きです。
外へ、って意味で、むかし、英語をおぼえはじめたころ、ほんとうに好きだった。外へ外へ外へ外へって。あのころは。”
----------------rani-nya.JPG「ラニーニャ」伊藤比呂美柞 1999年。あたしは離婚して日本の家を出た。ここは南カリフォルニア。連れてきたのは二人の娘たち。捨ててきたものはたくさんある。白人の夫は人工股関節をつけてコンピューターに埋れ、娘は拒食症。空はまっ青、荒涼とした不毛の地に繁殖するユーカリ。エルニーニョが終わるとラニーニャだそうです。上質な饒舌体の小説集。

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