父・山之口貘

 「パパは毎日、喫茶店の隅に座っている。
 するといろんな人がやってくる
 用事があってやってくる人も、だだふらっとはいってくるひともある。
 毎日毎日そういう人たちを見ていると、パパにはその人達の骨まで見えてくる。
 その骨がまた、狸の骨に似ていたり、カラスの骨に似ていたり、猿の骨に似ていたりするんだ。
 人間らしいちゃんとした骨をもっている人は、お前が考えているよりずっと少ないものなんだよ」
 「パパはどうなの」と、私は聞いた。
 「パパか。
 お前、見えないか、情けないやつだな。
 パパなんか骨の髄まで人間だらけじゃないか。」
と、父はふざけてみせ、次にはとても真面目な顔になって言った。
 「パパはね、借金をしたり人のお古をもらったりして暮らしているけれど、人間以外のものにはなりたくないといつも思って生きているんだよ。」

「父・山之口貘」山之口泉より

冬のウヨロ川のキツネとタヌキ


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