ワイルド・ヤード

裏庭はそのはてはわからないくらい深く、手入れなどはあまりしていない。ホテルの女主人のマルガリートは、「ワイルド・ヤード(荒れた庭)が好き」とぼくがはじめてこのホテルにきたときに言っていた。
おなじことを自慢げにしゃべる女がいて、このアムステルダムとおなじように北海(ノルト・ゼー)に近いドイツのブレーメンに住んでいる。国は違ってもヨーロッパの北の地方の町で、国をこして広い平野がつながっている。
ブレーメンにいる女は、じつはうちの下の娘で、やけに奥深い裏庭のある家に住んでいるが、ほとんど手入れはしない。そんなふうだと、予期しない雑草が色とりどりのちいさな花を咲かせたりして、「ほんとに、おもいがけないことがおきる庭なの」と娘は言う。

田中小実昌「新宿ゴールデン街の人たち」 より

私もそうなんだけど、人からは単なるズボラといわれるんですよね。
その年によっては、見たこともない花が見られることもあるのに。


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